不同意わいせつ罪とは?具体的な行為と対応について解説
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目次
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪とは、相手の同意がないにもかかわらず、わいせつな行為を行った場合に成立する犯罪です(刑法176条)。
これまで強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪として処罰の対象となっていた行為は、不同意わいせつ罪として処罰されます。
不同意わいせつ罪の「わいせつな行為」というのは、判例では「性欲を刺激、興奮又は満足させ、かつ、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」とされています(最大判昭和32年3月13日刑集第11巻3号997項参照)。相手方が同意していないのに、その体を触ったり、自身の性器を触らせたりするなど行為をイメージしていただければ結構です。
2023年7月13日の刑法改正までは、わいせつ行為を行う手段として「暴行又は脅迫」が必要でしたが、法改正により被害者がわいせつ行為に同意していないことで足りるようになりました。
不同意わいせつ罪の構成要件
(不同意わいせつ)
第百七十六条 次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。
2 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も、前項と同様とする。
3 十六歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。
不同意わいせつ罪が成立するためのポイントとしては、⑴①~⑧のいずれかの理由により、同意しない意思を形成・表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせたり、又はその状態にあることに乗じること、⑵行為がわいせつなものではないと誤信させたり、人違いさせたり、人違いをしていることに乗じること、⑶16歳未満の相手方に対してわいせつ行為を行うこと
⑴①~⑧のいずれかの理由により、同意しない意思を形成・表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせたり、又はその状態にあることに乗じること
刑法改正までの「強制わいせつ罪」では、わいせつ行為を行うにあたって同意があるか否かが大きな争点となっていました。
被害者がはっきりと拒否する意思を示したり、わいせつ行為に抵抗していなかった場合には、加害者が被害者の同意があると考えて行為を行っていたのであれば、「故意」が認められず、犯罪が成立しないおそれがありました。
しかし、被害者が拒否したいと考えていたとしても、わいせつ行為を受けた経緯や場所、加害者との関係性など、状況によっては拒否したくてもできないケースもあったでしょう。
そのため、刑法改正によって、①~⑧にあたる場合には、わいせつ行為への同意がないものとして、不同意わいせつ罪が成立し、処罰されることとなりました。
①暴行又は脅迫を加えること
②心身の障害を利用すること
③アルコール又は薬物の影響を利用すること
④睡眠その他の事由によって意識がはっきりしない状態に乗じること
⑤同意しない意思を形成、表明する時間を与えないこと
⑥突然のことに恐怖させたり、びっくりしている状況を利用すること
⑦虐待によって抵抗する気力がないことを利用すること
⑧経済的、社会的地位に基づく影響力によって受ける不利益への不安から、抵抗できない状態を利用すること
「同意しない意思を形成・表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせたり、又はその状態にあること」とは
①同意しない意思を形成するのが困難
わいせつ行為を受け入れるか否かの判断ができない状態を指します。アルコール又は薬物の影響を受け、意識がはっきりしない場合等が該当します。
②同意しない意思を表明するのが困難
意識ははっきりしているものの、わいせつ行為を拒絶する意思を伝えるのが困難な状況を指します。突然襲われたため拒否する時間的余裕がない場合、加害者が上司や取引先であることで拒否することで受ける不利益から拒否が困難な場合等が該当します。
③同意しない意思を全うすることが困難
意識ははっきりしており、わいせつ行為に抵抗することもできたにもかかわらず、わいせつ行為をやめさせることが困難な状況を指します。暴行脅迫によって被害者の抵抗がおさえられてしまったような場合等が該当します。
⑵行為がわいせつなものではないと誤信させたり、人違いさせたり、人違いをしていることに乗じること
性的な行為ではないと誤信させたり、人違いさせること、又は被害者がそのような誤信をしていることに乗じてわいせつ行為をした場合も、不同意わいせつ罪が成立します。
マッサージ店や美容室などで、マッサージの一環と説明してわいせつな目的がないように勘違いさせて体を触ったような場合や、暗がりで加害者のことがよくわからない部屋などで、被害者が交際相手やパートナーと勘違いしているような状況を利用した場合が考えられます。
⑶16歳未満の相手方に対してわいせつ行為を行うこと
法改正により、従来は被害者の同意の有無で強制わいせつ罪が成立するか否かの判断が異なっていた、13歳以上16歳未満の子どもへのわいせつ行為について、5歳以上年上の者がわいせつ行為をした場合、同意の有無にかかわらず不同意わいせつ罪が成立することになりました。
不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の違い
従来の「強制性交等罪」が「不同意性交等罪」へと改正されています。不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の違いは、被害者の同意がないにもかかわらず、性交等を行った場合に成立することです。性交等には、膣内への陰茎挿入行為だけではなく、口腔性交や肛門性交、膣や肛門への身体の一部(指など)や物の挿入行為も含まれます。
不同意わいせつ罪にあたる具体的な行為
電車内で被害者の体を触るいわゆる痴漢のようなケースや、夜道で突然抱き着いて被害者の体を触る場合などが挙げられます。
マッサージ店や整体などで施術中に必要がないにもかかわらず、被害者の体を触るケースなどもあります。
西宮市でも、カラオケ店内で女子高校生が不同意わいせつの被害に遭う事件が発生しています。
令和6年6月、西宮市のカラオケ店で当時16歳の女子高校生に対し、体を触るなどわいせつな行為をし、個室トイレに逃げ込んだ被害者に同意なく、性交した疑いhttps://www.fnn.jp/articles/-/748175
不同意わいせつ罪をしてしまった場合の刑罰
不同意わいせつ罪の法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑です。
不同意わいせつ罪には、罰金刑がなく拘禁刑の定めしかないことから、被害者と示談等により不起訴処分とならない限り、公判請求となり、公開の法廷での裁判を受けることになってしまいます。
従来、都道府県の迷惑防止条例違反として検挙されていたような事案であっても、不同意わいせつ罪に問われることにより、略式起訴によって公開の法廷での裁判を避けるということができなくなったことから、被害者との示談の重要性が今まで以上に高まっているといえるでしょう。
不同意わいせつ罪で警察による捜査を受ける流れ
不同意わいせつ罪は、迷惑防止条例違反よりも悪質であることが多く、逮捕されるケースは少なくありません。逮捕されなくても、刑事事件として捜査の対象になっていることには変わりありません。そのため、取り調べに対する対応や、被害者との示談交渉等、しっかりと対策することが大切です。
逮捕後釈放された場合や、逮捕されなかった場合には、警察や検察から取り調べのため呼び出しを受け、都度出頭することになります。
取り調べでは、慣れない取り調べの雰囲気や捜査担当者の気迫に気圧されて、不利な発言をしてしまうケースも少なくありません。逮捕されていないからといって安心することなく、対策をすることが重要です。
不同意わいせつ罪で弁護士に相談するタイミングは?
逮捕されてしまった場合は、身柄拘束からの解放を目指して勾留を阻止する活動や保釈請求等の活動を行います。
逮捕の有無にかかわらず、不起訴処分を獲得するためには、被害者が特定できる場合には被害者と示談を成立させることが重要です。特に不同意わいせつ罪では、罰金刑の定めがないことから、公開の法廷での裁判を避けるためには、被害者との示談が非常に重要となっています。
しかし、被害者は、加害者と直接やり取りすることは避けたいでしょうし、連絡先すらも教えたくないと考えることがほとんどでしょう。そのため、警察から被害者の連絡先を得た上で、示談交渉を行うには、弁護士が入れる必要があります。
駅やショッピングモールなどでの犯行で被害者が特定できない場合であっても、弁護士と共に反省を深め、検察官に寛大な処分を行うよう申入れ協議することも有益です。
いずれにしても、検察官の処分が行われてしまえば、もはや不起訴処分を獲得することはできないため、警察からの呼び出し等を受けた際には、すみやかに弁護士に依頼されることをおすすめします。
まとめ
不同意わいせつ罪で警察から逮捕や呼び出しを受けてしまっても、不起訴処分を獲得できる可能性はあります。不起訴処分を獲得するためには、早期に弁護士が動くことが必要ですので、ご自身で判断することなく尼崎市、伊丹市、西宮市にお住まいの方は、不同意わいせつ罪の対応に注力している弁護士に相談することをおすすめします。
この記事の著者

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はじめまして。弁護士の西山勝博と申します。
私は、これまで多数の刑事事件のご依頼を受け、解決してまいりました。
いずれのご相談内容も、全て異なり、同じものは一つとしてありません。
どの依頼者様にもベストな解決方法というのもありません。依頼者様の状況によって、ベストな解決方法は異なります。
私は、依頼者様のお話を伺った上で、依頼者様と一緒にベストな解決方法を考え、実現したいと考えております。
そのために、依頼者様のお話を丁寧にお聞きし、コミュニケーションをしっかりと取りながら対応することを心掛けております。
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